日本という国
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134 「歌舞伎」の名前は、「常軌を逸する。自由奔放に振る舞う。奇異な」という意味の「傾かぶく」から。「一いっ風ぷう変かわった奇異な芸」を「傾かぶいた芸」として、「かぶき」と呼んだ。最初は「歌舞妓」の字を当てたが、明治時代に「妓」が「伎」に置き換えられ「歌舞伎」となった。 「物珍しい一風変わった芸能」だった「歌舞伎」は、18世紀初頭の元禄げんろく時代に演劇としての要素を高めた。 「歌舞伎」の名作には「仮か名な手で本ほん忠ちゅう臣しん蔵ぐら」、「勧かん進じん帳ちょう」、「暫しばらく」、「菅すが原わら伝でん授じゅ手て習ならい鑑かがみ」、「義経よしつね千本せんぼん桜ざくら」、「「東とう海かい道どう四よつ谷や怪かい談だん」」などがある。 【「歌」、「舞」、「伎」の文字】 〈歌〉は音楽的要素。長なが唄うた、義ぎ太だ夫ゆうなどの三しゃ味み線せん音楽がバックミュージックとして、演技を助ける。雨や風や、音のない雪も大太鼓で表現する。 〈舞〉は舞ぶ踊ようの舞で、「舞」のこと。仕草や立ち回り(争うシーン)も舞踊が基本。『娘むすめ道どう成じょう寺じ』」、『鏡かがみ獅じ子し』などは、舞踊そのもの。 〈伎〉は演技すること。演技の「技(わざ)」と同じ。 「歌舞伎」の演目は、主に江戸時代以前の武士が出てくる「時代物」、町人や庶民が主役の「世せ話わ物もの」、「舞踊」に分けられる。 また、豪快な芸で勇壮な人物を演じる力強い内容の「荒あら事ごと」と、柔らかな芸で男女の恋愛などを演じる「和わ事ごと」がある。どちらも、親子の情、男女の愛、主従の忠義、出会いも別れもある人間の心、つまり喜怒哀楽がテーマだ。 「歌舞伎」の海外公演では、心理描写の巧みな演技が共感を呼んでいる。 上流階級の御殿のような豪華絢爛な舞台もあれば、庶民生活をリアルに描いた舞台もある。醜く、残酷な場面でも、美化して表現する。どんな時も「歌舞伎」は美意識を忘れない。 ◎「歌舞伎」の言葉 ◎ ◇ 定じょう式しき幕まく 世界の舞台芸術の多くは上下に開閉する緞どん帳ちょうを使うが、「歌舞伎」は主に左右に開閉する引ひき幕まくを使う。 黒、柿色(茶色)、萌葱もえぎ色いろ(グリーン)の三色の縦縞たてじまの引幕を「定式幕」という。芝居の幕開き、幕切れに用いる。 ◇ 女おんな形がた(おやま) 「歌舞伎」では、子役以外はすべて男性が演じる。女性の役を演じる男性を「女形」または「おやま」という。

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