日本という国
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138狂言きとどめて、別の道から神社に案内する。そして、境内の紅葉が神しん木ぼくであることを教えて、自分が竜田姫だと名乗って社殿の中に姿を消す。やがて夜になると、後ジテが僧の前に竜たつ田た明みょう神じんの姿で現れ、神社の成り立ちの物語を語り、神楽かぐらの舞を見せ天に昇っていく』。 「能」は「仮か面めん劇げき」と呼よばれる。様々な「面」が面白さの大きな要素だ。 翁おきな系けい、老人、鬼神、女性(若い女性、中年の女性、老女)、怨おん霊りょう、男性(少年、公きん達だち、武将)などの「面」による「舞」が披露される。大振りで華麗な装しょう束ぞくも、観客を楽たのしませる。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「狂言」は猿楽さるがくの系統の中で、「能」との組み合わせで発展し、「せりふ」劇として独立した。 中世の庶民の間に、滑稽な物真似芸である「狂言」が、風刺性の強い喜劇として、笑いを撒き散らした。「狂言」では、観客の間で哄こう笑しょう(大口をあけて笑うこと)が起こる。冗談や洒落などの対話が笑いを誘うのだ。 「狂言」の主役は「能」と同じ「シテ」。相手役は「アド」と呼び、シテと同じように活躍する。 「狂言」の「しぐさ」は、「能」の場合と同じように、やや腰を落とし体の重心を下げ、「摺り足」で歩く。 「狂言」の「せりふ」は、民衆の生活などに題材を求め、中世の口こう語ごで生き生きとした対話形式で書かれている。主に上かみ方がた(京都、大阪)の日常会話が多い。 「狂言」では、「扇おうぎ」を杯さかずきとして使ったり、戸を開ける時の動作では「ガラガラ」、障子を破る時の動作では「バリバリ」と口で音を出したりする。「能」と同じように戸や障子などの舞台装置はない。開けたり閉めたりする動作の時に擬音を発する。 「面」をつけない素す顔がお(直ひた面めん)が普通だが、人間(祖父、尼あまなど)、神仏・鬼き畜ちく(えびす、大黒、福の神など)などの「面」がある。 装しょう束ぞくは、絢爛豪華な「能」と比べると地味だ。 「狂言」は、約260曲きょくある。 それらの演目は、主要人物によって神かみ物もの、大だい名みょう物、小名しょうみょう物、婿むこ物、女物、山伏物、鬼物、出家物、座頭物、百姓物、集あつめ狂言に分類される。 登場人物では、「太た郎ろう冠か者じゃ」が親しまれている。 「大おお蔵くら」、「和泉いずみ」、「鷺さぎ」の三流派がある。 「狂言」という言葉は、普通の生活で、 ①人をだますために仕組んだこと、うそ(「狂言強盗」) ②戯れに使う言葉、冗談 などの意味に使われる。

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