日本という国
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167 ③ どちらにも属さない「随想的章段」 自然美や人生観などの文章は、「五月の山里を牛ぎっ車しゃで歩いた印象」や「垣かい間ま見みた恋人たちの朝の別れ」など、スケッチ風の描写が優れている。 内容については、「作者、清少納言の個性の記録」とみるか、「定子の後こう宮きゅう周辺の記録」と捉えるかで、「枕草子」の評価は異なってくる。 作者の自慢話も、「定子周辺の記録」として読むと、「清少納言」は中宮「定子」の価値基準にすべてを委ねたことになる。 ―――――――――――――――――――――――――――――― ※「枕草子」の「第一段」と現代語訳 ※ 春はあけぼの、、、<現代仮名遣いで表記> 春はあけぼの。ようよう白くなりゆく、山ぎわすこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。 夏は夜。月のころはさらなり。闇もなお、ほたるの多く飛びちがいたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもおかし。雨など降るもおかし。 秋は夕暮れ。夕日のさして 山の端はいと近ちこうなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさえあわれなり。 まいて、雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるはいとおかし。日入りはてて、風の音、虫の音など、はた言うべきにあらず。 冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも いと寒きに、火など急ぎおこして、炭もてわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。 ↓ 【現代語訳】 春は夜明けが一番趣がある。だんだん白々と夜が明けてゆく峰近くの空が少し明るくなって、そこに紫がかった雲が細くたなびいているのが素晴らしい。 夏は夜がいい。月の出ている間がおもしろいのは言うまでもない。闇夜の時でも、蛍がたくさん乱舞している光景はおもしろい。また、ただ蛍ほたるが一匹、二匹、かすかに光りながら飛んで行くのもおもしろい。雨が降る夜もおもしろい。 秋は夕暮れがいい。赤い夕日がさして、山の端に落ちかかったころ、烏がねぐらに帰ろうとして、三羽、四羽、また二羽、三羽と急いで飛んで行く姿さえも、しみじみとした趣がある。 まして、雁などが列をつくって空高く飛んで行き、たいそう小さく見えるのは、まこと

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