日本という国
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177こって来た変化は、いくつかずつでも険けん阻そな山坂の多いところを歩きよくした。そのかわり、大雨ごとにやって来る河水の氾濫が旅行を困難にする。そのたびに旅人は最寄り最寄りの宿しゅく場ばに逗留して、道路の開通を待つこともめずらしくない。 この街道の変遷は幾世紀にわたる封建時代の発達をも、その制度組織の用心深さをも語っていた。鉄砲を改め、女を改めるほど旅行者の取り締まりを厳重にした時代に、これほどよい要害の地勢もないからである。 この渓谷の最も深いところには木曽福島の関所も隠れていた。 《注・岨そわ=険しい所》 ◆ ◆ ◆ ◆ [四・村むら上かみ 春はる樹き] 国の内外で高い評価を受ける現代の人気作家「村上春樹」は1949年1月、京都市生まれ。早稲田わせだ大学第一文学部演劇科卒。ジャズ喫茶の経営を経て、1979年に「風かぜの歌うたを聴きけ」で群ぐん像ぞう新人しんじん文学賞を受賞、文壇にデビューした。 2009年5月に上巻が出版された長編小説「1いちQきゅう8はち4よん」(新しん潮ちょう社しゃ)が発売直後から異例の売れ行きを見せ、2010年4月にかけて出版された上・中・下の3巻合計で380万部を超える超ベストセラーに。 作品は、長短編小説だけでなく、ノンフィクション、随筆、アメリカ文学作品の翻訳など多岐にわたる。 代表作の「ノルウェイの森」をはじめ、多くの作品が世界的に注目を集め、アメリカ、フランス、ドイツ、ロシア、中国、韓国など、50以上の言語で翻訳されている。 特に、中国で「絶対村上(ばっちり村上)」、台湾で「非常村上(すっごく村上)」という言葉が流行するほど、アジアでの人気が高い。 「1Q84」は、「月が二つあるパラレルワールド(二つの物事が並行している世界)に紛れ込む“近きん過か去こ”の物語」。 中国、ドイツなどでも翻訳され、2011年11月に米国で英語版が出版され話題を集めた。米誌「ニューヨーク・タイム・マガジン」は「人間の脳がやっと耐えられる数々の不思議な展開に驚かされる」と評した。 「村上」はインタビューで「1981年の短編『四月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて』をふくらませたもの。男の子が女の子と出会う。二人は別れ、お互いを捜す。単純な物語。長くしただけです」と話している。 アメリカの新聞評も、「スリラーとしても、恋愛小説としても楽しめる」、「並外れて野心的」と好意的。 (この項は、2011年10月27日付「朝日新聞」から)。

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