日本という国
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178 1987年に発表した「ノルウェイの森」は2008年時点で、単行本の発行部数が上巻・下巻合わせて450万部に達した。2009年8月には、単行本と文庫本を合わせた発行部数が1,000万部を超えた。 「ノルウェイの森」は、《1987年、37歳になった主人公の「僕」がハンブルグ空港に着陸する直前の飛行機の中でビートルズの「ノルウェイの森」を耳にして、自殺した恋人「直なお子こ」を思い出し、自らの回想の中に探しに出かける》、という内容。 文芸評論家の清し水みず良よし典のり氏しは朝日新書「村上春樹はくせになる」の中で、「村上春樹の長編小説には、二つの系列がある」と次のように書いている。 《一つは「羊ひつじをめぐる冒険ぼうけん」以降に確立されたアドヴェンチャー物語の系列。 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」、「ダンス・ダンス・ダンス」、「ねじ巻きクロニクル」、そして「海うみ辺べのカフカ」が含まれる。 もう一つは、失われた恋を回想するセンチメンタル・ロマンスの系統。 作者自身は「ノルウェイの森」を「100%の恋愛小説」と言ったが、まさにこの作品によって、失われた恋の記憶を回想し心の痛みを反はん芻すうするセンチメンタル・ロマンスのスタイルが確立されたといっていい。 「国境の南、太陽の西」、「スプートニクの恋人」がその系統に連なる》 「村上春樹」は毎年、ノーベル文学賞の有力候補として注目されている。 2006年には、「フランツ・カフカ賞」をアジア圏で初めて受賞。この賞は「自らの出身国や国民性、属する文化などにとらわれない読み手たちに向けて書こうとする現代作家の、芸術的に特に優れた文学作品を評価する」ために、2001年に創設されたチェコの文学賞。2004年、2005年に受賞したオーストリアの女性作家、イギリスの劇作家はいずれも同年にノーベル文ぶん学がく賞しょうを受賞した。 アメリカのプリンストン大学は2008年6月、「村上春樹」に名誉学位(文学博士号)を贈った。「不可思議なものと日常的なものを併へい置ちし、現代生活の中心に存在する孤独と不確実性をすくい上げている」というのが理由。 村上作品は「文章は平易で分かりやすいが、作品のストーリーは難解だ」としばしば指し摘てきされる。このことについて、「村上」は「物語を楽しむこと」と、「心に訴える文章」の重要性を強調した。 「村上」の最新小説は、2013年4月発行の『色しき彩さいを持もたない多た崎さきつくると、彼かれの巡じゅん礼れいの年とし』。20歳になる直前、友人たちに一方的に絶縁された「多崎つくる」が主人公。36歳になって、仲間を訪ねる旅に・・。発行部数は発売一週間で「100万部」を突破した。 2014年4月に、6年ぶりの短編集「女のいない男たち」(全6編)を出版。 2015年には、紀行文集『ラオスにいったい何があるというんですか? 』を出版した。 また、「村上春樹」は随筆「やがて哀かなしき外国語」の中で、「外国人に外国語で自分の気持ちを正確に伝えるコツ」について、次のように書いている。

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