日本という国
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189「昔話」四節=むかしばなし 日本の各地に、人々の間に「口づて」で伝えられている「昔話」がある。 「むかし、むかし」、「あるところに」、「おじいさんとおばあさんがいました、、」という書き出しが多く、具体的な時代や場所や人の名前などは分からないものがほとんどだ。 親が、子どもを寝かせ付ける時などに、聞かせることが多く、日本人の間に広く語り継がれている。子どもが、読んで楽しく、人として大事なことを学びながら、「大切な心」を育はぐくんでいく、という教訓的な意味が込められている「昔話」が多い。 子どもたちに最も知られている四つの「昔話」を紹介する。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ [一・「鶴つるの恩返おんがえし」] 昔々、やさしくて正直者ですが、とても貧乏な「おじいさん」と「おばあさん」がおりました。 ある寒い日のこと、おじいさんは鉄砲をかついで山へ猟に出かけました。 ところが、いつの間にか雪がちらちらと舞い落ちてきて、獲え物ものは一匹も見つかりません。 「今日は、だめだのう。帰るとするか」と、おじいさんはつぶやきました。 すると、その時です。向こうの木のかげで、バタバタッと何かあばれているではありませんか。「はて、ありゃあ、何かいな」。近寄ってみると、それはわなにかかって、もがいている一羽の鶴でした。 「かわいそうに。助けてやろう」。 おじいさんは、鶴の足をはさんでいるわなをはずしてやりました。たちまち、鶴は大きくはばたいたかと思うと、うれしそうに空へ舞い上がっていきました。 それから、いく日がたった雪の晩のことです。 トントン……、トントン……。誰か戸をたたく者があります。 「今じぶん、誰じゃろ」。 戸を開けてみると、一人のかわいい娘が雪を被かぶって立っていました。 「私は旅の者ですが、道に迷って困っています。今夜一晩、泊めていただけないでしょうか」。 それを聞いて、やさしいおじいさんとおばあさんは言いました。 「さあ、どうぞ、どうぞ。こんな雪の晩じゃでな。こっちへ来て、あったまりなされ」。「ご親切に、ありがとうございます」。 「いやいや。うちは、二人きりで、さみしいくらいじゃ。泊まってくれたら、うれしいが」。 おばあさんが言うと、娘はうれしそうに、にっこり笑って言いました。 「それではお言葉に甘えて、泊まらせていただきます。そのかわり、ほんのお礼のしるしに機はたを織おってさし上げましょう。でも、一つだけお願いがございます。私がいいと言うまで、決して、機を織っているところを見ないでいただきたいのです」。

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