日本という国
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190娘は機織り機のある部屋に入っていきました。しばらくすると、軽やかな機を織る音が聞こえてきました。トントンカラリ、トンカラリ……。 次の日になって、やっと娘は部屋から出てきました。手には、織り上げたばかりの布を持っていました。 「さあ、雪が止んだら、これを町へ持っていって売って来てくださいな」。 「おお、なんと見事な布じゃ」。おじいさんもおばあさんも目を見張りました。 その日も雪は止まず、娘はもう一晩、泊まることになりました。 そして、また機を織り続けたのです。 おじいさんとおばあさんは、娘がどうしてあんな見事な布ぬのを織れるのか、不思議に思えてなりません。 「ほんの、ほんの少しのぞいてみよう」と、そっと部屋の戸のすきまからのぞいてみました。「あっ!」なんと、そこにいたのは娘ではなく、一羽の鶴でした。 鶴が自分の羽を抜いては糸に混ぜて布を織っていたのです。 しばらくすると、娘が部屋から出てきて言いました。 「私は、あの雪の日に助けていただいた鶴でございます。ご恩返しにまいりました。姿を見られては、もうここにはいられません。どうぞ、いつまでもお達者で」。 たちまち娘はいなくなり、一羽の鶴が空へ舞い上がっていきました。 やがて、娘が織った布は驚くほど高く売れて、おじいさんとおばあさんは、いつまでも幸せに暮らしました。 [二・「桃もも太た郎ろう」] 昔々、ある村に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が「どんぶらこっこ、どんぶらこ」、「どんぶらこっこ、どんぶらこ」と流れて来るのが見えました。 おばあさんが「甘い桃なら、こっちへ来い。苦にがい桃なら、あっちへ行け」と言うと、おいしそうな大きな桃がおばあさんの方へ流れて来ました。

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