日本という国
197/235

193 それから何年かが経ちましたが、「一寸法師」はちっとも大きくなりません。いつまでも指先ほどの大きさのままでした。 ある日、一寸法師はおじいさんとおばあさんの前に来て頼みました。 「私は都みやこへ行きたいのです。どうか、『お椀わん』と『箸はし』と『針はり』をください」。おじいさんとおばあさんは寂しい気持ちになりましたが、可愛い「一寸法師」のために、旅の準備をしてやりました。 「一寸法師」は『針』を刀の代わりに腰にさし、『お椀』の舟に乗り、『箸』を「櫂かい」にして、元気いっぱい都へ向かってこぎ出して行きました。どんぶらこ、どんぶらこ。おわんの舟に乗った「一寸法師」は何日も川を下って、やっと都へ着きました。 「一寸法師」が町の中を歩いていると、一軒の立派なお屋敷の前に出ました。そのお屋敷は偉いお殿様とのさまのお屋敷でした。 玄関に立って「頼もう、頼もう」と、大声を張り上げました。「何の用じゃ」と、家け来らいが玄関に出て来ましたが、どこにも人の姿がありません。 「おかしいぞ。声がするのに誰もいない」と、不思議に思ってまわりを探しました。「ほら。ここにいますよ」と、「一寸法師」が声をかけました。 家来は、やっと、はきもののそばに立っている小さな男の子を見つけました。 「ほほう。小さな子じゃのう」。 「私は一寸法師と申します。どうか、このお屋敷で働かせてください」と、「一寸法師」は頼みました。 「体は小さいが、なかなか元気者のようじゃ。よし、お殿様に頼んでみよう」と言って、家来は「一寸法師」をお殿様のところに連れて行きました。 「一寸法師」は、お殿様の手の平に乗って、きちんと座ってあいさつをしました。お殿様は「これはおもしろい」と、喜んで「一寸法師」を家来にしました。 「一寸法師」はお屋敷にお客が来ると、お殿様の手の平の上で、踊ったり、歌ったり、『針』を腰から抜いて剣の舞をして、みんなを喜ばせました。うわさは、お屋敷の中だけではなく、町中に広まり、「一寸法師」はたちまち人気者になりました。

元のページ 

page 197

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です