日本という国
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194 お殿様には一人の娘がいました。お姫様は「一寸法師」を一目見るなり、気に入って片時もそばから放そうとしませんでした。お姫様が本を読む時は、「一寸法師」は机の上で頁ぺーじをめくり、遊びに行く時もいつも一緒でした。 ある春の日、お姫様は清きよ水みずのお寺にお参りに行くことになりました。 その頃、都では恐ろしい鬼が出て来て、人のものを盗んだり、乱暴したり、若い娘をさらって行くので、みんな困り果てていました。 そこで、お殿様はお姫様のお供に強い家来を大勢つけました。 「一寸法師」もお姫様の肩に乗ってついて行きました。 無事にお寺の観かん音のん様さまへお参りし、帰り道のことです。 突然、二匹の大きな鬼が現れて、お姫様に襲おそいかかりました。 お供の家来たちは、刀を抜いて闘いましたが、とてもかないません。鬼はお姫様を捕まえて、さらって行こうとしました。 「助けてぇ、助けてぇ」と、お姫様が叫びました。 その時、「一寸法師」が鬼の前に立ちはだかりました。 「我こそは一寸法師だ。この刀かたなでひと突きにしてやる。悪いやつをこらしめてやる。覚悟しろ」。 「一寸法師」は、腰にさした『針』の刀を抜いて、鬼に向かって行きました。 鬼は、相手があまり小さいので、「わっはっはっ。生意気なやつだ。お前なんか一ひと呑のみだ」と言いながら、「一寸法師」をつまんで、呑み込んでしまいました。 ところが、「一寸法師」は鬼の腹の中で大暴れです。 『針』の刀を振ふり回まわして、腹はらの中なかを突つっつき回まわしました。 「いてててっ。痛いっ」と、鬼は苦しんで、「一寸法師」を吐き出しました。 もう一匹の鬼が「一寸法師」を捕まえようとしたので、「一寸法師」は鬼の顔に、はい上がって、『針』の刀で鬼の目玉を突き刺しました。 鬼たちは、「こりゃあ、かなわん。助けてくれ」と叫びながら、一目散に逃げて行きました。 「お姫様。もう大丈夫ですよ」と、「一寸法師」はお姫様を助け起こしました。 「お前のおかげで助かりました。本当にありがとう」と、お姫様は「一寸法師」にお礼を言いました。鬼が逃げ出した後に、小さな物が落ちていました。 お姫様は、「これは鬼が落としていった物だ。願い事が何でも叶う“打ち出の小こ槌づち”という宝物に違いない」と言いました。 そこで、「一寸法師」はお姫様にお願いをしました。 「それでは、私の背が高くなるようにしてください」。 お姫様は“打ち出の小槌”を振りながら、「一寸法師の背よ、高く高くなぁれ」と祈りました。すると、「一寸法師」はみるみるうちに大きくなり、りりしい若者になりました。 やがて、「一寸法師」はお姫様のおむこさんになり、立派なお殿様になりました。 そして、おじいさんとおばあさんを都に呼び寄せ、みんなで幸せに暮らしましたとさ。

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