日本という国
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195 [四・「笠かさ地じ蔵ぞう」] 昔、あるところに、とても貧乏なおじいさんとおばあさんが住んでいました。 年が暮れて、大みそかのことです。 近くの家からは、お餅もちをつく音がペッタン、ペッタンと聞こえてきます。 明日はお正月だというのに、おじいさんとおばあさんの家には、お餅を買うお金がありません。 おばあさんが「どうしやものかのう」と、ため息をつくので、おじいさんが言いました。 「そんじゃ、山へ行って、「たきぎ」(注)でも取ってきて、町へ売りに行ってこよう」 それから、おじいさんは山へ、たきぎを取りに行って、それを持って町へ出かけて行きました。 「たきぎはいらんか。お正月のたきぎはいりませんか」 と、おじいさんは一生懸命売りに歩きましたが、ちっとも売れません。 夕方になって、とうとう雪まで降り始めてきました。 寒さはひどくなり、お腹なかはすくし、疲れてくたくたになったので、おじいさんは、仕方なく、帰ろうと町はずれまで来ました。 そこで、笠かさ売りのおじいさんに出会いました。 「どうですか。笠は売れましたか」と、おじいさんが尋ねると、笠売りのおじいさんは 「いんや。五つ持ってきた笠が一つも売れねぇ。どうしたもんかのう。困ったもんだ」 と言いました。 二人は、ため息をつきました。 そして、どうせ売れないなら、同じ物を家に持って帰っても仕方がない。 「いっそのこと、取り替えっこしよう」ということになり、二人は、「たきぎ」と五つの笠を交換して、帰ることにしました おじいさんは、笠を背負って、雪の降る野原の道を、とぼとぼ歩いて行きました。 雪はどんどん降ってきて、あたりはもう薄暗くなってきました。 「おお、寒い、寒い」 ふと気がつくと、道ばたに石の地じ蔵ぞうさんが六つ並んで立っていました。 「おお、頭にこんなに雪をかぶって。お地蔵さんも、さぞ、寒かろう」 と、おじいさんは、お地蔵さんの頭の雪を払うと、自分の持っている笠を一つずつ、かぶせてあげました。

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