日本という国
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199しゅうだんしこう「集団志向」二節= ◇「家」制度 ◇ 日本人は、まとまって行動する「集団志向」が強い。 一つの集団に属することで具体的な利益だけでなく、精神的な安心も得られるからだ。それは、日本の農耕社会と、その中での「家」制度に由来する。 弥生やよい時代(紀元前3世紀から紀元3世紀頃)以降に村落での定てい住じゅうが始まった。 村落社会は「家」が重要で、構成員は緊密な関係にあり、情じょう緒ちょが支配する閉鎖的な共同体だった。 村落の人たちは先祖からのつながりと親戚関係を大切に、「大家族」として暮らした。とりたてて自己主張をしたり、村の掟おきてを破ったりすると「のけ者」にされ、そこに住んでいくのが難しくなる。掟を破った者を「葬式そうしきと火事の二つ以外」では仲間はずれにする「村むら八はち分ぶ」が起きた。 村落では、おのずから上下の人間関係が出来た。個人としての自覚は弱く、「集団の利害」が優先された。『農耕社会と「家」に支えられた日本人』は、集団に対する忠誠心は発達したが、個人を主張する観念は十分に養われなかった。 ◇ 集しゅう団だん帰き属ぞく意い識しき ◇ 「家」はもともと経済生活を前提とした共同防衛組織だった。 戦後の経済成長に伴い農村の都市化や家内労働の企業化が進み、旧来の「家」制度は崩壊し、社会構造も大きく変化した。 しかし、日本人の思考方法や倫理規範は、閉鎖的な社会の中で「人間関係を重視する傾向」から容易に抜け出せなかった。 日本の「家」制度の特徴は、現代の企業や官公庁の伝統的な終身雇用制と年功序列制に生き続けている。手て厚あつい福利厚生を通して、組織への帰属意識が強まり、忠ちゅう誠せい心しんが高まった。 しかし、近年、経済・産業のグローバル化に伴ともなって、日本でも能力主義が台頭たいとうし、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの非正規社員が急増している。伝統的な終身雇用制や年功序列制は徐々に変質し、「個人」意識の高まりとともに、日本人の「集団思考」も変わりつつある。

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