日本という国
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023の瀬せ戸と際ぎわに立たされた。難問は、金融機関の不ふ良りょう債さい権けん問題だった。 「バブル」景気の頃、金融機関が土地を担保に企業に融資した多額の資金が、「バブル」崩壊後の不況で回収できなくなり、焦こげついた。不良債権を大量に抱えた金融機関は経営の危機に直面した。一転して、企業へ融資をしない「貸かし渋しぶり」が生じ、「景気の低迷」と「不正常な金融システム」の悪循環が続いた。 不良債権処理のために、1998年以降、金融機関の自己資本充実のため「公的資金(税金)」が投入された。各企業も、不良債権の処理のため、債さい務むの圧縮を迫られ、人件費の削減などで企業の体質を強化していく中で、景気は徐々に回復に向かった。 「バブル」崩壊後の各企業は、大学卒業者の採用を減らさざるを得なくなり、「年功序列」と「終身雇用」の維持に苦心した。不況の長期化で、中年層(40歳代後半から50歳代)の人余りが目立った。上じょう司しによる「肩たたき」で、退職あるいは転職を迫せまられるケースが増えた。能力のある若い層の賃金を高くし、中年・高齢者の給料を抑おさえるなど、従来の「日本型経営」の雇用慣かん行こうとは異ことなる動きが出てきた。 年功序列」と「終身雇用」 90年代の「バブル」崩壊で、高度成長を支えてきた「年功序列」賃金と「終身雇用」の「日本型経営」の限界が指摘され始めた。 従来、従業員の給料を優先する傾向が強かった日本の企業は、人件費の抑制と株主優先の考えに変わってきた。また、「地価」と「株価」の暴落ぼうらくによる「バブル経済」の崩壊とともに、企業に依存していた日本人の意識が、若い層を中心に徐々に変わってきた。 若者は「働き過ぎ」と思うようになり、仕事だけでなく、家庭も大事にし、自分自身の生活を楽しむようになった。また。若くて能力のある人たちは、興味のある仕事、自分に合った仕事、給料の高い会社に転職する動きを見せるようになった。 会社のためにすべてを捧げる「会社人間」に疑問を感じるようになり、「一人の人間が一生一つの会社」にしがみつく必要はない、と考える若者が増えた。「年功序列」と「終身雇用」は経済発展の万ばん能のう薬やくではなくなった。 人口が減っていくなかで、「長時間労働の是正、非正社員の待遇の改善、子育てや介護をしながら働ける環境の整備」など、日本人の「働はたらき方かた」を見直そうという動きも出ている。 厳しい国際競争に勝ち抜くため、従来の「年功序列」の給与体系を見直し、社員の役割や成果に応じた賃金制度を導入する企業が出始め、「定年後の再雇用」や「定年制の廃止」を採用する企業が増えている。「日本型経営」は徐々に形を変えつつある。 しかし、ある調査では、6割以上の会社が「原則として終身雇用を維持する」と回答。自動車などの輸出産業が強さを発揮しているように、「日本型経営」の良さを再評価する動きもある。 従来の「日本型経営」を超えた「経営戦略」と「労務管理システム」の構築こうちくが急がれている。

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