中国の大学から届いた学生と先生の声

第五回・中国の大学生、院生『日本語作文コンクール』1997年 応募総数・736編テーマ=「日本の政府・企業に望むこと」

「教師」は「ろうそく』

王 暁(北京第二外国語学院大学院・北京市) <一等賞>

 中国では、「教師」を「ろうそく」になぞらえている。「ろうそく」は、「自分を燃やして他人に光明を与えている」からだ。今、わが国の中学、高校で日本語を教えている教師たちは困難に満ちている。参考書も皆無に近いし、新しい資料も手に入らない。日本へ行くチャンスなどは勿論ない。私は大学を卒業し、大学院に入るまで二年間、中学、高校向けの教科書編纂の仕事をしていた時、東北地方にある農村の中学校へ見学に行った。ぼろぼろに傷んだ校舎の教室で生徒たちは一生懸命日本語を勉強していた。「なぜ日本語を勉強していますか」と質問したら、「中日友好のために」という答えが返ってきた。
 日本語担当の女の先生は、中国のある短大を卒業したばかり。経済的に魅力のある仕事がたくさんあるのに、それを断り、生まれ故郷に戻って、日本語教師として教鞭をとることにしたという。私たちが北京から持って行った国際交流研究所から贈って頂いた「季刊誌『日本』」を渡した時、その若い女の先生は目を潤ませて喜んでくれた。資金不足で、その学校の図書館には日本に関する本も、日本語の文法書もない。『日本』のような日本を知る上で大変役に立つ小冊子をもらったのは本当にありがたいことだったのだ。私は堪えきれないほどの感動を覚えた
 彼女のような情熱的な教師がいてこそ初めて、わが国の中等教育における日本語教育もいろいろな困難を乗り越えて発展できるのだ。日本の方々にも彼らに対する理解と協力を求めたい。日本の協力と中国の日本語教師の努力が継続的になされてこそ、日本語教育の充実につながり、両国の友好、ひいては日本理解を深める道を切り開いていくものと信じている。